2012年10月17日水曜日

あさイチ 出生前診断

 今朝、研究室に行く前に準備してテレビを見ていたら、夏菜のハイテンションの後に、
あさイチで、「出生前診断」の話題をやっていた。
 NHKスペシャルで何度かやっているから、NHKでこのテーマ自体は別に驚かないけど、こんな、奥様方が子供を送り出して見るお気楽時間帯に、こんな重いテーマで。
 室井佑月や内藤剛志が顔をしかめて、能天気イノッチまでも、「カウンセリングの体制をしっかりしないと」とやたら真面目なコメント。

 途中、第一子がDown症の両親が、二人めを授かった時の「出生前診断をするかしないかの葛藤」を語る件が、とても良かった。
 奥さんは、「旦那さんにさらに育児に負担をかけることを考えて、検査しようか迷ったが、検査した後に堕胎することは、上の子を否定することになるから、自分としては検査をすることが考えられなかった」という。旦那さんも同じ気持ちで、結局は検査せず、健常な第2子を授かり、その後9年になる。「知識がないまま、精神的なケアの体制が不十分なまま、検査を簡便に受けることばかりができるようになる世の中で、自分たちの経験を少しでも伝えることが出来れば」と取材に応じたと言う。

 それに対する視聴者からのFAX 「検査を受けなかった人の美談ばかりを強調してはいけない。実際に障がい児を持つことで育てていけないケースも五万とある」とすかさず有働アナが釘を刺す。

 印象的なのは、医者が患者に言う、「選択はあなたの自由です」ということば。僕は、産科遺伝カウンセラーの資格もないし、取る気もないので敢えて言うが、検査を受けることが自由なだけであり、選択は義務なのだ。つまり、検査を受ける権利が、選択をする義務を産むというだけのことだ。だから、その義務を負わされたくない人は、権利を主張しなければ良い。極端に言えば、子供を作るのも権利であって、産んだからには育てる義務があるのだ。権利と義務ってそういう関係でしょう。

 新しい技術が生まれて、進歩すれば、また新しい問題が生まれる。当たり前のこと。
ただ、その新しい技術は、多くが、効率と経済を重視して優生的な思想でなされているのだろうな、とは感じるが。脳死移植、iPS, 尊厳死・・・。

 僕は、人間が人間の生死にとやかく言う権利はないと思っているので、何週までなら人工中絶可能などという恣意的な基準は、人間が決めるものではないと思ってさえいる。
 しかし、それでも現実的に早産や染色体異常によって望まれない障がいを持って産まれる子と、苦労して育てなければいけない宿命を背負った家族に対しては、精一杯医者として接しようと思う。それが、医者になる権利を持って、小児科に進む権利を持って、障害のある子と接する権利を持った小児神経科医としての自分の義務だと思っている。

 番組に慶応の産科の教授が出ていたが、カウンセリングをしっかり受けない限りは、検査を進めないほうが良いと言っていた。迷う人には、現実を見せることも一つ。迷うことさえないという思い込みの強い人には、何も言うまい。それがユーザーニーズというやつか?


 


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