2012年12月17日月曜日

総選挙・雑感

終わってみれば、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という結果だった総選挙。大勝の感想を聞かれた自民党幹部は、こぞって、「自民党が信任を得たわけではなく、民主党がひどすぎた」と優等生な発言を繰り返した。
 安倍総裁も、選挙前の攻戦的で挑発的な発言から一転、慎重に言葉を選んで、まさに「保守」。野党の顔から与党の顔へのダイナミックな変化を1日にして見た。
 
 第三極も離合集散で、今回の投票率の低さは、結局有権者が第三極も信任するまでは至らず、「民主にNo」ということだけがはっきりとした結果として残ったという。しかし、首班指名を誰にするか、で既にもめているような、「言うだけ番長」ツートップも、そのタレント性は絶大で、50議席を越えてもう少しで第二党という結果は、「タレント性より実行力、政策」と言われる日本でも、まだまだタレント性が通用することを皮肉にも示した結果であった。それは、「タレント性が持たせる期待」と同様、「タレント性に対する強固な嫌悪」も表裏一体であり、一方の第三極「未来の党」が、結局は嘉田さんの無害さよりも小沢一郎への嫌悪感によって、脱原発派の声を集約できなかったことからも読み取れる。

 私は執念深い人間なので、小泉郵政選挙ぐらいから、一貫して民主党を支持している。
地元が岡田克也のお膝元であるというのもあるのだが、小泉・安倍・麻生に通じる「生理的嫌悪感」が今も自分の中にひっかかりとしてある。国民が、自民党にNoを突きつけた3年前の衆議院選挙、からの3年間の振り返りが、十分でないように思えてならないのである。
 今回の民意には程遠いので、無視してもらっていいんだけど、3年前の民主党のマニフェストは、小沢-鳩山ラインの作ったものだ。だから、民主党のこの3年を振り返る上で、小沢-鳩山時代と、菅-野田時代は分けて考えなければならない。
 野田佳彦が、財務省の言いなりになって、マニフェストの公約と正反対の消費税増税に踏み切ったことを批判する声も多い。しかし、それは、「3党合意」に基づくものであり、自民党と民主党の差異の根拠にはならない。社会保障に関しては、まだまだ議論が不十分であり、自民が民主に勝っているとは思えない。復興に関する問題は、自民党が民主党よりもスピーディーに遂行できるという保証はない。現時点では、自民と民主の大きな差異と言うのは、「憲法改正と国防、日米安全保障と対中外交」に尽きると思っている。つまり、昔石原某が言っていた「Noと言えるニッポン、強い日本を、取り戻す」である。
 これを日本国民に潜む、潜在的なナショナリズムと考えるのは早計だと思う。私はむしろ、「日本は、国防や外交に関する主体性をこれまで持ち得たことがないのではないか」という、思想としての未熟性を指摘しておきたい。もちろん、戦前のような思想教育をしろと言うわけではない。ただ、平和憲法というものを与えられたことによって、「考えないで済んでいた」というだけじゃないか、と思うのである。

 選挙争点としては、自民党や維新は、うまくこの辺をはぐらかして議席を得た。中韓は、日本の右傾化を一斉に報道するが、欧米や日本国内では、安倍総裁の、過去首相時の、特に対中外交を評価する声も多いので、そこまで懸念はされていないようだ。しかし、ここ数年内に、必ず、「憲法改正の是非を問う」選挙が行われることは間違いないだろう。

 国民は、自分たちの民意に対する振り返りを、きちんとすべきだと思う。何故、3年前に民主党を選んだのか、自民党にNoと言ったのか、よりましな政党はどこなのか。自分の1票で何も変わらない、と嘆くより先に、自分の中で政局を冷静に眺めるということをみんなすべきだ。

 そしてもう少し踏み込んで考えるならば、なぜ「不況なのか」ということじゃないかと思う。この不況は、日本だけじゃなくて世界の問題として捉えるべきだろう。投機マネーや格差が、不況を誘発しているのはあると思うが、もっと根本的には、軍事費の拡大(特にアメリカ)と、豊かさがあるんだと僕は思う。豊かさとは、「もうだいたいの必需品は手に入る。だから新しいものや良いものを作ってもそんなには売れないし儲からない」ということだ。経済の原則は物々交換である。他国にないものを輸出し、自国にないものを輸入する。豊かになれば経済が停滞するのは当たり前である。機械化を進めて人件費をどんどん削っていったら、人はどうやって働いたら良いんだろう??

 民主党はおそらく細野豪志が、代表になるだろう。純化路線が、党としての成熟につながるのか?どこに自民党の差異を作っていけるのか?中道の価値を見出せるか?
 

0 件のコメント:

コメントを投稿